昨年買った本『「ゆっくり動く」と人生が変わる』は、すごく良い本だった。これは、啓蒙書と違って実践書だ。著者は順天堂大学医学部教授で、日本体育協会公認のスポーツドクターだ。芸能人からスポーツ選手まで、色々な精神面の相談に訪れているようだ。
この本の面白いところは、精神論ではなくて、まず「ゆっくり動く」という、形から入ることを薦めているところだ。そして、それが結果として、深い呼吸の腹式呼吸になり、呼吸が整って自律神経のバランスも整うことになるという。
「腹式呼吸法や丹田呼吸法がいいと言われるが、それを実践できている人は非常に少ない。そして、その呼吸法を意識すると、それ自体がストレスになって、かえって自律神経のバランスが乱れる」と書いてある。
「必要なのは、特に呼吸を意識しなくても、いつの間にか呼吸がゆっくり深くなっているような方法で、誰もがいつでもどこでも、手軽に実践できる最高の方法が”ゆっくり動く”なのです」と。
これを、去年の中頃から家庭でも職場でも実践してみた。結果は、ずっと続いていた女房とのギスギスした会話が穏やかになり、パートの仕事でも上司や入居者に対して、落ち着いて対処できるようになった。その効果に驚いたが、ただ、続けないと元に戻るので、今も習慣になるまで意識してやっている。
自分の今までの経験では、苦しんでいたり悩んでいるときほど、呼吸が乱れて早くなっている。イライラしたり、怒っているときは、かなり早い。逆に調子の良いときは、呼吸がゆったりとしている。気功や座禅の偉い先生が「呼吸がすべて」というようなことを言っているのは、そんな深い意味があるのだろう。
自分としては、スローモーションまで行かないが、ゆっくりと歩き、ゆっくりと食事をし、ゆっくりと家事や仕事をするように心がけている。ゆっくり動くことで、気持ちが落ち着いてきて、考え方も明らかに変わって来る。不思議だが、理屈が通っている。