自分が働くマンションに、高齢男性の入居者Yさんがいる。去年からこのマンションに越して来たようで、今は月火曜日とデイサービスに行っていて、朝方、自分が掃除に出るときに、エントランスでいつも顔を合わせる。年齢は83歳とのことで、足が少し悪いようだ。
このYさんは感じが良くて腰が低い人で、挨拶をするといつも「大変ですね。ご苦労様」と声をかけてくれる。Yさんは出身が江別で、ずっと農家をやっていたがやめて、去年このマンションに一人、移り住んできたそうだ。
そのYさんに自分も出身地を教えたら、後日、「私の同級生Hが昔、江別の土建屋に勤めていて、営業であなたの出身地に何度も行っていたことがあり、懐かしいのでいつか、あなたの出身地のことで、話を聴きたいと言っています」と言う。
そして、自分が館内を巡回していたときに、突然、そのHさんから電話がかかって来た。巡回後に、こちらから電話をした。仕事がもうすぐ終わるので、終わって自宅に着いてゆっくりしたら、こちらから電話をすると言った。
すると、「いや、私から電話をします」と言う。そして、家が近いことが分かると、「近くでコーヒーでも飲みながら会いますか?」と言い、「仕事が終わってからでも会いませんか?」と言う。自分は、仕事が終わってからだと疲れて会いたくないので、「月火水と仕事なので、それ以外の曜日なら大丈夫です」と言った。
ところが、ウヤムヤな返事で、それだとまずいのか、今度は「あなたが仕事帰りに、友人のY氏を車に乗せてきて、3人で会いませんか?」と言う。帰りは、H氏が友人をマンションまで送ると言う。どうしても、自分の仕事帰りに会いたいらしい。しかし、なんで自分が仕事帰りにY氏を、自分の車に乗せて行かなきゃならんのか。
当初は、電話で話すだけと思っていたのに、そのうち近くの店でコーヒーを飲みながら、そして友人Y氏も一緒に3人でと言うが、3人で話してどうなんだと思う。第一、80歳を超えると、だいたい誰しもボーっとしてくるし、耳も遠くなるし、会話がまともに進まない。楽しいわけがない。
80歳以上のジジババともなると、ほとんどがそうだろう。こちらが「体調はどうなの?」と聴くと、「天気はあまり良くないねえ」というような返事が返って来たりする。話が噛み合わないから、相手に合わせて適当に話をするが、挨拶以外はまずキチンとした会話が成立しない。
今回のH氏も電話で話していて、少しそんな感じがしたし、Y氏もそれに近い。その2人に囲まれて話をしていて、果たして楽しいのか?会話が弾むどころか、一方的に相手の話を聴くだけで、苦痛でしかない。しかも、年寄りは同じ話ばかりするんだな、これが。
「無理はしない。嫌なことはしない」というのが、今の自分のモットーだ。仕事が終わってから、孫を預からなければならないとか言って、なんとか電話だけで済ませようかと考えている。ただし、寿司でもご馳走してくれるというなら、話は別だ。どこでも行くぞ。話が噛み合わなくても、最後は適当に話を合わせる自信はある。
しかし、83歳のオヤジと67歳のオヤジでは、16歳も歳が離れているので接点も少なく、話すことは知れている。だから、いずれもうすぐ、自分もこういうことになるのだろうと思う。息子や孫が「ご馳走してくれたり、なんか買ってくれるなら、会うけどね」と言うのだろうな。今も、そんなもんか。