■すごく下品だが、すごく面白い
前に読んだこの作者の「不浄を拭うひと」が面白かったが、今回は「やらかしました」シリーズを読んだ。これがまた、すごく面白かった。下ネタ満載で、ネタどころか、そのものズバリのストライクだ。 しかし、面白いだけでなく、色々と考えさせられ、涙が出るほど感動もした。これほど自分に身近な漫画は、今まで無かったのではないかと思うくらいだ。
この作者は「沖田×華 おきたばっか」という女性で、小学生の頃に「学習障害」「注意欠陥多動性障害」、中学生の頃に「アスペルガー症候群」と診断されたという。しかし、本人がそれらの症状を自覚したのは、成人してからだそうだ。「アスペルガー症候群」は、他人とのコミニュケーションが難しいそうで、誤解されて相手を怒らせたりもするらしい。
仕事は、当初は看護師をしていたが、その後、風俗に勤めるようになった。そして、それから漫画家になったそうだ。風俗のときの話が、これまたすごくおかしい。それから、師と仰ぐ漫画家と出会い、漫画家になることを強く勧められ、いずれ同棲して結婚した。自殺未遂が2度あると言う。
■大なり小なり、似たようなもんかな
という経歴だが、すべて、あっけらかんと書いていて、驚くやら吹き出すやら。「アスペルガー症候群」については、大変なんだなと思うと同時に、自分にもこんな症状があるんじゃないか、女房はどれかに当てはまるなと思ったりした。大なり小なり、正常と言われる者と紙一重じゃないのか、と思ったりもした。
この「沖田×華」が、段々と人からの愛情が理解できて涙する描写などは、何度読んでも感動する。今はサイン会を開いても、かなりの人が集まるほどの人気だそうだ。「アスペルガー症候群」ということで、漫画が大学のテキストになったり、講演会にも呼ばれたりもして、「なんで、こんな自分が?」と驚いているようだ。
自殺未遂のことや、頭の中がパニックになったときの話も、すごく興味があった。なにかに救われたとしか思えないことや、パニックのときの様子にすごく関心があった。自分が胆石で病院に急遽入院し、手術までに2日間ずっと、激痛を抑える麻酔を色々とやったことがあった。麻酔はほとんど効かず、横になって寝ることも出来なくて、つらくてずっとベッドに座り、サイドテーブルに顔をうずめていた。
■久々の才能ある漫画家だ
後で先生に聞いた話では、麻酔は限界ギリギリまで使ったそうだ。それでも効かなかった。手術の前の晩に「死んだ方がマシだ」と思いながら、トイレに行った。便器に座ると、頭の中に色んなテレビのような画面がたくさん浮かんだ。そのとき「そうか!これが、この世の中の真実なんだ!」と思った。ずっと続いていた激痛と麻酔で、おかしくなっていたのかもしれない。
「沖田×華」のパニック状態のときの絵を見たときに、「俺と同じだ」と思った。とにかく、すごく面白かったが、色々と考えさせられる本でもあった。Amazonプライムの読み放題の無料の「やらかしました」シリーズを全部読んだが、他にも色々とたくさん書いているようなので、いずれ読んでみよう。すごく才能のある、いい漫画家だと思う。