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還暦過ぎたオジサンのつぶやき

コミック本「銀の匙 Silver Spoon」

コミック本の「荒川弘『銀の匙 Silver Spoon』」全15巻を古本で、2,673円で買った。本の程度は「非常に良い」で、本の端が少し茶色く焼けている巻もあったが、目立つ汚れもシミもなく良かった。この本を買おうと思ったのは、2人の孫に読ませようと思ったからだ。「子供に読ませたいコミック本」で検索したら、この本が出て来た。

札幌で受験戦争に明け暮れていた男子中学生が、北海道の農業高校を受験して入学して来るところから、物語は始まる。酪農や家畜の実態などが詳しく書いてあり、家畜の命についても深く書かれている。まず自分が全部読んでみたが、小2と幼稚園の男の孫2人には、刺激が強過ぎたり難しいところもあって、まだ早いかなと思って、時期が来るまで、自室の本棚に置いておくことにした。

この本の中の農業高校のモデルは「帯広農業高等学校」で、大学は「帯広畜産大学」だという。作者の荒川弘は、この辺りの地域の出身で、「帯広農業高等学校」を出て、その後7年間、家業の酪農と農業をやっていたそうだ。だから、酪農に関しては詳しく、読み終わった後でそれが分かり、そうでなければ、ここまで深いことまでは書けないだろうなと納得した。

         

それと、これも読み終わった後で分かったことだが、この本の作者の「荒川弘」が女性だと知って、すごく驚いた。名前は「ひろし」ではなく、「ひろむ」と読むそうだ。すっかり、男性だと思っていた。「銀の匙」の内容からしても、男性が書いた本だと思い込んでいた。この作者の代表作に、「鋼の錬金術師」がある。そう言えば、我が家の息子達が小中学生のとき、夢中で読んでたな。

この本を読むまで、知らないことがたくさんあった。鶏の卵は尻の穴から産まれてくるということ。この本の主人公も、それでショックを受ける。「ウンコと一緒か!」と。だから、卵はキレイに殻を洗って出荷するそうだ。それと、豚は噛む力が非常に強く、人間の指を簡単に噛みちぎるということも知った。可愛いと言って下手に撫でたりすると、指を噛みちぎられるのかなと怖くなった。

自分が小学生の頃、父親が生きた鶏をしめてくるから一緒に来いと言って、家の横の空き地に行った。すると、生きている2羽の鶏を包丁で、いきなり首チョンパした。「あわわわ…、なんてことするんだ!」と絶句した。首がなくて走り回っている鶏を見て、父親はケラケラ笑っていた。昔は田舎の農家では、こんなことを普通にやっていたようだが、この本の中でも、農業高校の生徒が普通にやっていた。

 

          

家畜を相手にしている農家では、そういう家畜の命の選択を迫られることが多い。本に、豚は産まれてから、数ヶ月で食肉にするし、肉を柔らかくするためにオスの子豚は去勢と言って、陰嚢を切開してタマを取り出したりすると書いてあった。人間が食べやすいということのために、高く売るということのために。 だから、子豚が可愛いからと言って名前を付けるなと言う。愛着が湧くからだと。

以前、小学校で子豚を育てるというドキュメンタリー番組があった。小学生達が、1頭の子豚に名前を付けて育てて行く。子供達は、すごく可愛がっていた。そして、数ヶ月後に食肉にするために出荷されたとき、子供達は泣いて悲しんだ。その番組が物議をかもした。

我々人間は、多くの生き物を殺して食べて、生きている。この本は、酪農や畜産のことだけなく、そういうことについても考えさせられる。そして、農家が経済的に困窮している現状についても書いてある。確かに、自分の田舎の農家の人達は、みんな、農協に莫大な借金があると言って、貧しい生活をしていた。「豊かなのは、農協だけだ」と、みんな言ってた。

 

          

 

女房の高校の後輩が、地元で酪農をやっていた。この後輩は、江別市にある酪農大学を出て、ニュージーランドの農家に短期留学したそうだ。そのときに、ニュージーランドの農家の人達は、自分達で作った牛乳を加工してチーズにしたりして、道路脇で販売したりしていたという。自分のところで作ったものは、自分達で販売するという。           

それを見て、農協に安値で買い取ってもらうという、今までの日本の常識とは違うことを考えたそうだ。自分が結婚してすぐのとき、その人とそんな話をしたことがあったが、その後すぐ、その人が牛乳を農協には一切売らないで、自分のところで「低温殺菌牛乳」というのを売り出した。やり始めた当初は、莫大な借金を抱えていると笑っていた。

この牛乳が札幌のデパートで売られたり、地元の小学校の給食で使われたりした。自分も当時は、この牛乳を飲んだことがあったが、従来の牛乳とは別物で非常に美味しかった。その後、この人はチーズやソフトクリームなども作って販売し、敷地内にレストランも作った。今も繁盛しているようだ。

 

           

オホーツク北部の興部町というところにある「ノース・プレイン・ファーム」だ。「おこっぺ有機牛乳」が主体で、他にもチーズやヨーグルトや色々なものを販売している。そんなことも、この本を読んで思い出していた。最後の巻の方は、自分達で厳しい農家を変えて改革していく話になっていて、まさしく、「ノース・プレイン・ファーム」だなと思って読んでいた。

全部読み終わったが、後でまた読み直した。中味がすごく濃いなあと改めて感じたが、ずっとギャグ満載で可笑しくて吹き出しながら、一気に読んでしまう。そして、色々と考えさせられる。恋愛もあり、このジイサンも久しぶりに胸ときめいたりして。 ̄m ̄ ふふ  最後は、スケールの大きな展開で終わる。夢もあり、いい本だ。いつか、孫達に読ませたい。