オジサン NOW

還暦過ぎたオジサンのつぶやき

「売らなきゃ良かった、マーチン000-28」

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ギターが好きなので、今でもギターの販売サイトを時々見ている。数日前、そのサイトで新品の「マーチン 000-28」を見つけた。オールドを意識した造りで、昔自分が持っていたのとほぼ同じ仕様で、税込価格で37万円だった。トップはシトカス・プルース、サイドバックはローズウッドの仕様だ。自分もかつて、000-28を所有していたことを思い出した。

40年も前だが、欧米に1ヶ月半ほど旅行に行ったことがある。旅行に行く前から、アメリカでギターを買おうと決めていた。そして、日本に帰る数日前に、ロスアンジェルスの有名な楽器店に寄った。店内の天井から、2本ぶら下がっていた特売の「マーチンの000-28」と「ギブソンのJ-50」がすぐ目に入り、両方とも当時の日本円で12万円くらいの価格だった。

どちらにしようか迷っていたら、店員がぶら下がっていた2本を外し、1本ずつ弾いて聴かしてくれた。ジェームズ・テイラーも好きだったので「J-50」もいいなあと思ったが、「000-28」で店員がビートルズの「Here Comes The Sun」を弾いたので、すぐそれに決めた。

安っぽいハードケースが付いてきた。税関で税金がかからないようにと、領収書には10万円以下の金額を書いてくれた。後で分かったが、「000-28」は当時は人気がなかったそうで、それで安売りしてたのだろう。しかし、この高い買い物をしたおかげで、帰りの飛行機賃が無くなり大変な目にあった。

というのは、予約券の飛行機の時間を間違えて、当日、空港の受付に行くと、予約していた飛行機は既に飛び立っていた。仕方なく、家から帰りの飛行機代を送ってもらうことになった。金は、手元に数千円しか無かったからだ。金が送られてくるまでの数日間、向こうで知り合った、同年齢の男性が宿泊していたホテルに泊めてもらった。その人が、空港まで送りに来てくれたので助かった。

田舎の実家に戻ってから、この「000-28」は自分の部屋にずっと置いていた。しかし、自分は呼吸器が弱かったので、いつも加湿器を点けて、湿度をかなり強くしていた。それで、乾燥しているアメリカから持ってきた「000-28」のいい音が、段々と鳴らなくなった。

あまりにも鳴らなくなったので、札幌の楽器店に送って診てもらったら、内部のブレーシングが数本外れているという。湿気で、接着が剥がれたようだ。その修理代はどれくらいかと聴いたら、10万円はかかると言う。12万円で買ったギターを、10万円で修理なんてバカらしいと思って、修理するのをやめた。

その後ずっと弾いていなかったが、5年後に札幌の楽器店に持って行き、再度診てもらったら、やはり、それくらいの修理代がかかるという。ただ、楽器店の担当者が少し興奮して「それよりも、このギターは最近のギターと違い、ネックに金属製のロッドが入っていない、昔の時代に製作した貴重なギターですよ!修理して、ずっと持っていた方がいいですよ!」と教えてくれた。

ネックも含めて、すべてにいい木を使っているので、これはすごく価値のあるギターだと言う。ということで色々と考えたが、結局10万円もかけて修理するなら売った方がいいと思い、そのままの状態で10万円で売った。ギター販売店では、修理して30万円以上で売るんだろうなと思った。30年前でその価格なら、今なら貴重なオールドとして、まだまだ高額になっているだろう。

12万円で買って10万円で修理して、計22万円のものが倍以上になったかもしれないと思うと、少し惜しい気がする。それよりも「貴重なオールドを持っている」という満足感もあったんだろうなあ。

画像は、普通のマーチン000-28。以前持っていた000-28の画像は、探したが見つからなかった。

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