オジサン NOW

還暦過ぎたオジサンのつぶやき

《そんなの、医者じゃなーい!》

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6年前の話になる。厚別の脳神経外科病院で、MRIの脳ドックを受けた。その結果、頸動脈に異常があると言われて、画像フィルムと処方箋を渡され、かかりつけの医者に見せて薬をもらうようにと言われた。両首に、プラークというかたまりがあるようだった。この時の担当の医者は、60代後半の威厳のありそうな先生だった。(以下、大先生)

数日後に、糖尿病でいつも通っている、同じ厚別にある病院の担当医に、画像フィルムと処方箋を見せて薬を出してもらおうとしたら、「紹介状がなければ、薬は出せません」と言う。驚いて、何んとか出して欲しいと頼んだが、それでもだめだった。仕方なく、また検査を受けた病院に行き、大先生に「紹介状を書いてください」と頼んだ。

すると、大先生は「紹介状?うちの病院とあそこの病院は昔から密な関係で、紹介状など書いたことがなーい!なに言ってんだ!あそこの病院は、先生が何度もコロコロ変わるから、若い先生は訳が分からないんだ!」と怒り出して結局、紹介状は出してくれなかった。

どうしたらいいのかと悩んで、1ヵ月後に憂鬱な気持ちで、またいつもの病院に行った。すると、担当医は前のことは忘れているようで「あ、いいですよ。この薬ですね」と、簡単に出してくれた。ただ、2種類の薬の内、1種類の薬は有りませんということで、1種類だけ出してくれた。前に来た時には、紹介状がなければどうしてもダメだと、あれほど頑なに言っていたのに、まったくいい加減だ。

そして、その翌年にまた同じ脳神経外科病院で、経過観察で脳のMRI検査を受けて、終わってから結果を聴きに行った。診察室に入ると去年も診てもらった大先生で、10枚ほどの画像フィルムを見ていた。大先生は、しばらく黙って見ていたが「1年前と、ほとんど変わりないですね」と言うので、自分は「あー、良かったです」と言ったが、大先生は黙ってまだ画像フィルムを見ている。

少し経ってから「去年、処方した薬をキチンと飲んでいますか?」と言う。それで「実は2種類処方してもらった内の1種類の薬は、飲み続けています。ただ、もう1種類の薬は行きつけの病院で、この薬は有りませんと言われたので、1種類しか飲んでいません」と正直に答えた。すると、それまで静かだった先生が突然「この薬が無ーい?この薬が無ーいだと!」と急に声を荒立てた。

「この薬はポピュラーな薬ですよ!それなのに、この薬を知らなーい?」と、段々と語気が荒くなって、顔が紅潮してきた。それで、自分が「その先生は、パソコンと薬の本で調べていましたが、見当たらないと言っていました」と言うと、大先生は目の前にある薬の本をおもむろにバッと手に取り、目次を勢いよくめくって、その薬の載っているページをすぐ見つけた。「これですよ、これ!この薬が無ーい?」と、その箇所を指でバンバン叩いて、自分に見せた。

大先生の怒りは頂点に達し「そんなの医者じゃなーい!そんな奴は医者じゃなーい!」と、大声で叫び出した。自分も困ってしまって「いやあ、困りました。こちらで、この薬を出してもらうわけにはいかないでしょうか?」と頼むと、「もう一度、話してみたらいいじゃないですか!分からないはずがないんだ!分からないようなら、そんな奴は医者じゃなーい!」と言う。

仕方なく「分かりました。もう一度、話してみます」と言って診察室を出てきたが、しばらく放心状態だった。「なんで俺が、こんな目に。俺に言われたってなあ…」と、何度もつぶやいた。後で聞いたところによると、大先生は権威のある名医のようだった。だから、なおさら許せなかったのかもしれない。それと、プラークの大きさが1年後も変わっていないので、薬をきちんと飲んでいるのかと疑問に思ったようだ。

どうしようかと色々考えて、市内の違う脳外科病院に行き、大先生に処方された、もう1種類の薬をもらうことにした。それが、その病院の先生が大先生の教え子だそうで、「あの先生は、スゴイ先生なんですよ」と言っていたが、確かにスゴイ先生だった。それにしても、一番悪いのは担当医がポピュラーな薬を見つけられなかったことだが、なんでパソコンでも本でも見つけられなかったのか、未だに謎だ。