最近、田舎の同級生が亡くなった。20代前半の頃、その同級生は当時大阪の会社に勤めて住んでいた。自分は、四国に観光に行った帰りに事前の連絡もなしで、到着した空港からその同級生に電話した。何の気なしにぶらっと大阪に寄ってみたのだが、彼が居ることを思い出し、会会社に電話したらちょうど居て、空港まで車で迎えに来てくれた。
会うなり「俺は出張で、ほとんど大阪に居ないんやぞ!俺が居なかったらどうしてたんだよ、まったく。とんでもない男やなあ」と驚いていた。狭い部屋だったが泊まらせてくれて、翌日は2人で映画のはしごをして、確か4~5本は観た。観終わったら、さすがに2人とも「疲れたなあ」とつぶやいた。
電車で移動したが、そのとき彼は当時田舎に帰っていた自分のことをバカにして、駅のホームで電車を待っている間、「どうや、すごいやろ。田舎のみんなに、すごいの見て来たって自慢してやれ!ほら、スゴイ電車の数やろ?」と笑って言う。自分も学生時代は東京に住んでいたので、「このー!」と思った。
それで、周りの人達に聞こえるように、「スゲーな!これが電車っちゅうもんか?スゲーな!」、「あの建物もスゲーな!ビルっちゅうもんかー!スゲー!スゲー!スゲー!」と大声で言うと、彼は真っ赤な顔をして、焦って周りを見回して「な、なにを言ってるんだ!よ、よせ!」と言って、自分から離れようとするので、服を引っ張って行かせなかった。あのときの彼の狼狽ぶりが、今も目に浮かぶ。
その数年後に自分は結婚して、子供が産まれたときに、彼は我が家に遊びに来たことがあった。相変わらずで、そのとき産まれたばかりの我が子を見て「サルみたいやなあ」と言って、女房のひんしゅくを買った。それ以来、女房は「私、あの人、大嫌い!」と言うようになった。「可愛いね」とか、お世辞のひとつも言えと思ったが、彼らしい。
それから数年後、自分は江別に出てきて、逆に彼は田舎に戻った。それ以来、ずっと会っていなかった。会う気になればいつでも会えると思っていたが、今度会えるのはあっちの世界ということだな。「散る桜 残る桜も 散る桜」か。