オジサン NOW

還暦過ぎたオジサンのつぶやき

「ギター教室に行った」

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3年ほど前に、近くのギター教室に通った。新設したばかりの教室で、先生も人に教えるのは初めてのようだった。生徒の中に自分と同年齢のS氏がいた。30万円位の高価なアコースティックギターを持っていて、一度弾かせてもらったが、ものすごくいい音だった。「家族会議を開いて、女房と相談して買った」と言っていた。

この人はとてもギターが上手で、自分が弾いてみたかったエリック・クラプトンのアコギの曲なども簡単に弾いたりして、心の中ではいつかこの人に教えてもらえたらいいなと思っていた。他に消防の人、高校に入ったばかりのお兄ちゃん、20代のお嬢さんの生徒がいて、大抵は1人欠席の4名で授業は行われた。

高校生のお兄ちゃんは、何故かギターで「初音ミク」をやりたいと言っていて、先生に「やりたい曲の楽譜を持ってきたら?」といつも言われているのに持って来ない。先生が話している時も、勝手にギターをジャガジャガとかき鳴らして(叩いて)、自分が隣の席に座っていた時は、その大音量で先生の話し声がほとんど聞こえなかった。

お嬢さんは、斉藤なんとかの曲をやりたいと楽譜も持ってきていたが、Fのバーコードを押さえるのがかなり難しいようで、先生の指示で指を何度も精一杯広げて、体をねじってなんとか押さえようと苦しんでいたが、途中で「不可能!」と叫んでいた。自分とS氏以外の他の人達は、バーコードが押さえれないようだった。本当の初心者ばかりだ。

自分は先生の演奏に合わせて、先生が口に出して言うコードを一緒に弾くのがやっとだが、それでも何故か楽しい!今まで一人で黙々と弾くのがつまらなくなっていたが、こうして皆で弾いていると新鮮で、新たな喜びを感じた。 先生にそう言うと、「Sさんも、そういう理由でこの講習に来てるんですよ」と言ったのを聴いて、みんな同じなんだなあと思った。1人で弾いていても孤独で、段々とマンネリにもなってきて、張り合いがなくなってくる。

そんな調子で、2回目くらいまでは授業は進んでいったが、3回目から突然授業は音楽理論の話になった。ある程度理論が理解できていれば、ギター演奏の世界が広がるという先生の説明を受けて、音楽理論の授業が始まった。S氏はさすがに分かっているようだったが、自分や他の生徒はチンプンカンプンで「なんだ、こりゃ?」と思っていた。先生もこの先どう教えていいか行き詰まっていて、仕方なく音楽理論を教え始めたようだった。

各生徒のレベルや、やりたい音楽がそれぞれ大きく違うので、どうしても1時間のレッスンの中で生徒が4人いると、先生が1人に教える時間は正味10分か15分くらいしかなく、当然残りの生徒たちは残りの45分か50分はどうしていいか分からず、ブラブラしていた。 それで、自分はこれではいつまで経っても上手くならないと思い、月2回のグループレッスンを1回にして、残りの1回を個人レッスンにして欲しいと先生に頼んだ。

グループレッスンも今まで通り1回やるようにしたのは、S氏がいたからだ。彼の演奏を見たり聴いたり、時には一緒に演奏するということが楽しみで励みや目標にもなったし、同年齢なので親近感もあり、好きな音楽やギターの話しもピッタリ合うので、話していてすごく楽しかった。それで、段々と親しくなって、個人的に会って教えてもらえるかなという気持ちもあった。 

しかし、個人レッスンをやるようになってから、何故かグループレッスンがなくなった。つまり、いつの間にか月2回のレッスンが、全部個人レッスンになっていた。S氏にも会うことがなくなったので、先生にグループレッスンのことやS氏のことを何度も聴いたが、うやむやで何も言わない。それで、もしかしたらS氏や他の皆もすでに辞めているのではないかと思って、自分も思い切って辞めることにした。

生徒の皆が、いずれ辞めていくような予感もしていた。急にギター理論を始めたりして、みんなも戸惑っていたようで結局、自分が最後の生徒だったと思う。最近、そのギター教室のすぐ近くを通ることがあったが、まだギター教室はやっているようだった。自分は、ここに通う前やその後も違うギター教室に通ったこともあったが、自分にはこうして教わるということ自体が向いていないのかなと思い、習うのはもうあきらめた。