オジさん NOW

還暦過ぎたオジさんのあれこれ

「オジサンを引き寄せる力」

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3年前にマンションの管理人をやっていた時に、住人のオバサンが「このマンションの向かいの空き地に“売地”の看板がずっと立ててあったのがなくなってるけど、何か建つんですか?」と聴いてきた。分かったら連絡しますと返事したが、どう調べたらいいのか困っていた。翌日、マンション前の駐車場の舗道側で雑草取りをしていたら、舗道の向こうから買い物袋を両手に下げてヨタヨタと歩いてきたオジサンが、自分の顔をジッと見て「あ~、今度そこの空き地にツルハが来るなあ!」と突然話し出した。

驚いて「え!そうなんですか?」と言うと、オジさんは「近所のオバさん達が、みんなそう言ってるぞ」と言う。このオジさんの買い物袋にはペットボトルの大きな焼酎が2本入っていて、「ツルハでは、焼酎も売ってるからいいよなあ~」と笑いながら去っていった。仙人のような人だった。

そうかと思えば、マンション前の駐車場の清掃をしていたら、住人の70代と思われるオジサンが急に自分に近づいて来て、「あんたの電話番号を教えろ!」と強い口調で言ってきた。それで管理人室の電話番号を教えたら、「それじゃあ、あんたが勤務時間以外の時には連絡はとれないだろ!」と少し怒って言うので、とっさに「会社から、個人の電話番号を絶対に教えないようにと言われているんです」と言ったが、実際にそうだと思う。そしたら、「チェッ、仕方ないな」と言って去って行った。モホじゃないかと疑いもしたが、独り身なので検査入院で今回入院した時に、何かあったら連絡先をどうしようかと不安だったらしい。

数日したら、その人の兄さんという人が管理人室に来て、「弟から、管理人さん個人の電話番号を聴いておいてくれと言われたんだけど」と言ってきた。「まだ、分からんのか!」と思って同じことを話したら、「いや、分かりました」とすぐ帰っていった。兄貴がいるのなら、そこを連絡先にしたらいいのに思ったが、なにか事情があったのかもしれない。

1週間ほどして、マンションの各棟を見回りしていた時にバッタリと外で会ったので挨拶したら、いつものように気難しい顔をして頭を少し下げただけだった。それで、すぐに気づいて「そういえば検査入院どうでした?」と聴いたら、今まで見たことがないような笑顔で「何ともなかったんだよ」と嬉しそうに言うので、「それは良かったですねえ!」と自分が言うと、「ウン!」とうなづいてニコニコしてマンションに入って行った。

また或る時には、歩道に面しているマンションのゴミ収集所の中のゴミ整理と掃除をしていたら、通りすがりのオジさんが立ち止まってずっと自分を見ているので、「なんだこのオヤジは?」と少し薄気味悪かったが、仕方なく自分の方から「おはようございます!」と挨拶した。すると、「しかし、あんたはよく働くなあ」と言う。そして、「この先に有る俺のマンションの管理人なんか、朝来てから夕方に帰るまで、ずっとテレビばかり見てるぞ」とあきれたように言って、去って行った。

それと以前、我が家の近くを散歩していたら、道路を挟んだ向こう側の舗道を、腹巻にトランジスタラジオを入れて鳴らしながら歩いて来たオジさんが、自分の顔を見て急に立ち止まって、「あれだな~、あそこの歯医者やめたんだなあ」と、突然話しかけて来たことがあった。まったく、知らないオジサンだ。仕方なくて、「そうですね。やめたようですね」と言うと、うなずいて去って行った。次男坊の友達が近所に住んでいて、有名な「ラジオおじさん」ということだった。

しかし、自分には声をかけやすいのか、昔東京で外人に道を尋ねられたこともあるし、パリで西洋人に道を聞かれたこともある。パリで東洋人に道を聞いてどうすんだと思ったけど、当然「ノー、ノ―!ワタシ、わかりませーん」と答えた。 

今のパートの仕事は、受付で多くの老若男女のお客さんと接するが、これも残念ながら自分の当番の時には若い女性があまり来なくて、ほとんどがジイサンとバアサンばかりで、若い女性は用事が済むとサッサと帰って受付には来ない。「来い!コノヤロー!」とアントニオ猪木のように手招きして叫んでも、来ない。残念ながら、自分にはなにか高齢者だけを引き寄せる力があるのかもしれない。

それにしても、ジイサン、ジイサンと言っているが、自分がそのジイサンになっていることになかなか気づかないものだ。相手の歳が分かったら、自分とそんなに違わないことも多々ある。自分がジイサンということの自覚が、どうしても湧いてこない。不思議だ。きっと陰で、「腰曲がりジジイ」と言われているのだろうな。