オジサン NOW

還暦過ぎたオジサンのつぶやき

「マンションの管理人」

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2年前に、パートで勤めたマンションの管理人のときのことだ。この管理人を使っている管理会社は、江別市内にあるマンションの多くを請け負っていた。本社は札幌の中央区にあり、最初の面接はそこでやった。このマンション管理会社の創設者は、元々はマンションの管理人だったそうで、奥さんと二人三脚でやっていて、自分で管理会社を創ったそうだ。

しかし、管理人の実態を知っているだけに、極力暇な時間を作らせないよう、手書きの書類を管理人にたくさん書かせようとしたんじゃないかと思う。この会社の管理人は、書類のあまりの多さに閉口して、採用されてもすぐ辞めていく人が続出していると後で聴いた。中には未処理の書類を山積みにして、「こんなもん、やってられるか!」と怒って、辞めた人もいたそうだ。

ほとんどOA化されていなくて、日報や何をするにも全て手書きの書類で、その処理も整理も大変だった。札幌市内の本社から、職員が定期的に各マンションを周って書類を取りに来ていた。普通、マンションの管理人というと、朝から晩までテレビを見ているというイメージがあったが、この会社はそんな予想とはまったく違った。

このマンションは分譲マンションだったので、終の棲家として入居する中高齢者が多かった。ずっと見ていて分かったことは、中高年の男性はあまりマンションから出ないようで、見かけることがあまりなかった。

このマンション管理会社の最初の研修時に、指導員が「マンションの住人は、管理人のことをいつも自室の窓のカーテンの陰からジーッと見てるから、気をつけた方がいい」と冗談半分で言ってたが、まんざら嘘ではないと思うようになった。自分は、当時は腰がかなり悪い状態で歩くのも大変だったが、マンションの窓から見える範囲を歩く時や、掃除をする時は、痛みをこらえて背筋を伸ばして、ササッと歩いて作業した。

入居者のオバさん達は、サークルとか友達に会ったりとか、なにかしらやっているようで寂しさとかはあまり感じないが、オジサンの場合は見るからに寂しさを感じる。ただ、中には80代のオジサンで毎日、朝晩と自転車でこのマンションの周りを40分ほど走り回っているという人もいた。それを見ていると、年齢は関係なくて積極的になにかをやっている人の方が、いつまでも元気なのかもしれないと思った。

それと、入居者の中に独り身の80歳過ぎのオジサンとオバサンがいて、それぞれにガールフレンドやボーイフレンドがいて、お互いのマンションやアパートをひんぱんに行き来しているという話を掃除のオバサンから聞いた。老いて、益々盛んだ。

マンションならではのトラブルもたくさんあった。舗道脇のマンションの敷地に毎日のようにタバコの吸い殻を捨てて行く人がいた。注意書きの立札をしたら、数日後にいつも通り出社すると管理人室のドアの前にタバコの吸い殻が、バラバラとたくさん捨ててあった。

その後も数日おきに捨ててあり、時には缶酎ハイやビールの空き缶が管理人室の郵便受の上に置かれていた。これはもう嫌がらせというか挑発というのか、怖くなって管理人室の横にも設置してある監視カメラの画像を何度も見てみたら、なんと腕だけが見えてタバコの吸い殻を管理人室のドアの前に投げ捨てているのが見えた。

管理会社の担当者に話すと「そういうことがよく有るんです。だけど、下手にかかわらないでください。以前、逆にプライバシーの侵害とかで訴えられて、裁判で負けたことがあるんです」と言われたが、そんなバカなことがあるのかと思った。そのタバコの吸い殻や空き缶の廃棄はその後も、しばらく続いた。 

それと、ゴミ捨てのことでも色々な問題があった。毎回同じ人のようで、燃えるゴミの日に、燃えないゴミを燃えるゴミで覆い隠すようにして、何度も捨てていた。また、燃えるゴミの日に、市の指定の有料ゴミ袋に入れて捨てるのだけど、何かおかしいのがある。よく見てみると、透明の大きなビニール袋の中に最小の有料ゴミ袋が前面に見えるように入っていて、その透明な袋全部が最大の有料袋のように見せていた。

最小サイズと最大サイズのゴミ袋では、値段はどれくらい違うのかと後で調べてみたら、各10枚入りで最大サイズが800円で、最小サイズが100円だったので、1枚当りの最大サイズが80円で最小サイズが10円だ。1回で70円の違いだが、この金額の差でリスクを冒し、ルールを破ってまでやる意味があるのかと思った。

マンション前の駐車場に、吐き捨てたガムが落ちていたことが何度かあった。入居者から苦情も来ていた。これもデジカメで撮影して貼り紙で掲示板に貼ったが、それでかなり少なくなったと思う。ただ、ある入居者の駐車スペースの周りに、ほとんど捨てられていることが多かったので、その入居者に直接聴いてみたら、全く身に覚えがないという。

それからも注意して見ていたのだが、ある雨降りの日にその駐車場スペースを見まわっていて、アッ!と思って立ち止まった。その入居者の駐車スペースの濡れた舗装面を見たら、ものすごい数のガムの跡が浮かび上がって、周りが白くなっていた。ガムの跡は200以上は有った。舗装に溶け込んでいて雨の日以外は見えなかったようだ。

なんだか、傘を持って白くなった駐車スペースに呆然として立ち尽くしている自分の姿が、ミステリー映画のワンシーンのようで感動してしまった。その駐車場の入居者が、乗り降りする時にガムを吐き捨てていたり、その前の入居者がそうしていたということならそれまでなのだが、もうそこまで調べる気もなかった。マンションの管理人の時は、実に色々なことがあり、色々な人がいるものだと思った。