■管理人室のある第1棟の人達
マンションの入居者で、親しくさせてもらっている人達が何人かいる。管理人室がある第1棟には、ゴミ収集所のゴミをいつも仕分けして、整理してくれる女性のNさんがいる。最近、自分から年齢が80代だと言ったが、まだ70代前半くらいだと思っていた。今まで、イチゴやメロンやスイカをご馳走になり、すごく暑いときは、掃除中に冷たいお茶を何度もご馳走になった。
それと、30代で施設に通っている男性がいる。彼は身長が180センチくらいあって腹が出ていて、相撲取りのような立派な体格だ。問題もあるが、いつも各棟の非常灯が切れている場所を的確に教えてくれる。「3階のエレベーター前の廊下の蛍光管が切れてますよ」とか、「6階の奥から2番目の…」という具合に。 真夜中に近くのコンビニに行ったときに、両棟の照明を見ているようだ。
週に1回の照明点検をしているが、蛍光管が切れているときに、急いで交換しなくても良いので非常に助かっている。もう3回も教えてくれた。自分が「助かるよー!」と言うと、片手を上げてうなづく。頼りになる。もう一人、やはり30代くらいの同じような男性がいるが、この人は話好きで、だいたい天気の話で盛り上がる。
■隣の第2棟の人達
第2棟の高齢女性のMさんは、朝、掃除に行くとバナナとお菓子をくれる。この人も80代だ。以前、買ったばかりの男物のジャンバーを着ないからと言って、自分にくれた。声が大きく、話好きだ。もう一人、自分と同じくらいの年齢の女性も、掃除のときにたまに会うと「いつもご苦労さん!」と言って、飲み物やお菓子をくれる。
女性は、挨拶をすると色々と話してくる。若い女性には避けられるが、中高年の女性はとにかく明るい。たまに苦情も言ってくるが、それでも明るい。それと、まあ社交儀礼みたいなものだろうけど、「いつも、キレイに掃除をしてくれて有難う」と何度も言ってくれるので、嬉しくなる。「手が抜けなくなるなあ」と、心の中で笑う。
それと、古株で10年ほどここに住んでいるという40代の男性が、当初は色々と苦情を言って来たが、それでも面白い人で段々と仲が良くなり、このマンションの詳しいことを教えてくれるようになった。話が結構合うので、2人で管理会社の悪口を言ったりして、長時間盛り上がったりする。担当者が聞いたら、怒るだろうな。
■良いことや、嬉しいことが
両棟合わせて約140人もいるので、とにかく頻繁に苦情や問題があるが、悪いことばかりではなく、こうして良いことも楽しいこともたくさんある。そんな人達とのことを書いていて、次第にそう思ってきた。
これが、老人ホームの受付だと、入居者に面会に来る人くらいで、一日中、誰とも話さないこともあり、終業時間になって、1人で薄暗い廊下を歩いてポツンと帰る時の、あの寂しいこと。それなのに、あのときは苦情も問題もほとんどなく、すごく楽だったとか思い、募集があればそちらに勤めようかと考えたりする。
悪いことばかり考えると、すべてが悪いことになり、良いことばかり考えると、すべてが良いことになる。分かってはいるが、どうしても悪いことばかりに引っ張られてしまう。それで、虚ろな日々を過ごすことが多い。歳を取ると前向きになるということが、段々と難しくなる。
先日、いつもお世話になっている高齢女性のNさんとMさんに、地元のトマトを買って持って行った。2人ともすごく喜んでくれた。Nさんは、ビールを6缶もくれた。Mさんは、今まで見たことがないくらいの笑顔で喜んでいた。「あ~、良かった!」と思った。また、なにか持って行こうかな。