今月の24日から、ダブルワーク先の老人ホームで働き始めた。週に木曜と金曜日の2日間だ。朝8時半から午後16時30分まで。仕事の内容は、営繕と事務の雑用仕事になる。それで、24日は30~40代の女性の総務主任に施設内を案内してもらったりした。
そして、早速、或る部屋の浴室の電球が切れたというので、総務主任と一緒に行って交換をした。「ついに、俺の見せ場が来たか!」と張り切ったが、切れている電球は天井のカバーの奥に入っていて、外すのがやっとで新しい電球が入って行かない。
「あれ?あれ?」と言っていると、主任が「おかしいですね。ちょっと替わってもらえますか?」と言ってやると、ササっと嘘のように電球が回って入り、パーッと光った。「えー!」。俺の面目、丸つぶれ。バツが悪いので「家に帰ってから練習します!」と言ったら、「練習しなくてもいいですよ」と笑っていた。 あ~あ、やっちまったあ!
さらに、総務はこの主任1人しかいないので、とにかく忙しそうだ。それで、主任が他の用事で席を立った時に、電話がかかって来た。参ったなあと思ったが、仕方なく出たら「〇〇病院ですが、なんとかかんとかの件で電話しました」と言う。
自分はマンションの管理人室にかかって来た電話は冷静に対応し、聞きづらいときは何度も聴き返して確認する。ところが、こういう慣れないところの初めての電話は、相手が専門用語を言ったり、初めて聞く言葉が聞き取れない。それと、耳も遠くなっている。それなのに聴き返さないで、一番やってはいけないことをやってしまった。
〇〇病院から電話が来ましたと言えば、なんとかなると思ったのだ。しかし、そうは甘くない。主任が初めてきつい言葉で、「〇〇病院の誰からですか?」「誰にですか?」と聴く。「すみません。聞き取れませんでした」と謝った。あ~あ、またやっちまったあ!
実はこの電話を取ることは、トラウマになっている。以前勤めた老人ホームで、担当者が電話の扱い方を一切教えてくれなかった。それで、最初に或る病院から、ここの看護士に電話がかかって来た。相手からかかって来た電話を保留にし、担当者を呼び出したのはいいけど、その後、そのまま受話器を切っていいのか、どこかに転送ボタンがあるのか分からない。
切ったら大変だと思って、切らないでいたら受話器から「もしもし」と言う声が何度も聞こえるので、焦って切った。ところが結局、相手の電話が切れた。その後、電話がかかって来た看護師が内線で「どうしたの!」と怒って、エライ叱られた。もう、立ち直れないと思って、仲間の管理人3人に「俺はもう終わった。2度と立ち直れない」と話した。
その数日後、その看護師さんがニコニコして事務所に入って来た。すぐ立ち上がって「この前は、本当にすみませんでした!」と頭を下げた。すると、「いえいえ、いいのよ。それよりも、保留電話のつなぎ方、分かった?」と優しい声で言うので、涙が出そうになった。
自分が「あれから、総務部長にどうやるのか聴いたら、ただ受話器を置くだけでいいと言われたんです」と話すと、「えー、それだけでいいの?」と驚いていた。「それを最初に教えない、あの総務部長が全部悪いんです」と言いたかったがやめた。普通は、電話の操作方法を最初に教えるだろうになあ。数ヶ月後、それが理由じゃないが、その男性総務部長は解雇された。
ということで、あれ以来、人前で電話を取るのがトラウマになっている。1人で管理人室にいて、業者などからかかって来る電話の対応などはそつがなく、聴き忘れもなくて、惚れ惚れするくらい上手い! と、自分でそう思っているだけだが。
今回もあのときと同じパターンかと、恐怖心でいっぱいだ。これからずっと失敗して怒られてばかりなのかと不登校の生徒のように、なにか原因を探して休もうか、辞めようかと考えたりする。不登校になる子達の気持ちが、よく分かる。オジサンも同じだよ。ロト7で1億円当たったら、どんな理由で辞めようかずっと考えてるんだよ。
翌週、マンションの管理人の仕事に行くと、ダブルワークをすると話していた入居者の親しいギャル、じゃなくて80歳半ばのバル2人にそれぞれ会うと「どうなった?」と聴かれた。「ダメだあ…、おらあ、もうダメだぁ」と言うと、2人に「なに言ってんの!始まったばかりでしょ。なんとかなるわよ!」と、喝を入れられた。
それにしても、女性は強くて怖いなあ。今までの仕事の男性担当者で、そんな怖い人はいなかった。今度の仕事の事務所には、理事長と総務主任、介護主任、ソーシャルワーカーが2人の計5人の女性がいるが、バリバリで緊張感が漂っている。この中に、さまよえる子羊(老羊)の自分が放り込まれた。果たして、生きて行けるのだろうか。