この前、少し話すようになった、話し好きの30代男性が、夜中に上の階で騒音がすると言う。しかし、前には「夜はずっとヘッドフォンを付けているので、騒音がしても分からない」と言っていた。そして、朝方の3時頃に誰かが玄関のチャイムを鳴らした。…ような気がする。と言う。
さらに、自分の部屋のベランダに、建設資材の発泡スチロールみたいのが2個飛んで来たので、処分して欲しいと言う。結構な大きさだと思った。自分にその話をするために、出かけるときや帰って来たとき、エントランスにずっと居て、郵便ポストの中をずっと見ていたり、掲示板を長々と見ていて、なかなか中に入らない。
監視カメラでこっちが見ていると思って、自分が出てくるのを待っているようだ。だから、監視カメラを見てジッと静かにし、絶対に出てやらなかった。そう、簡単に出てたまるか! その日は諦めたようだが、翌日、とうとう昼休みに管理人室のドアをノックしてやって来た。
そして、上記の話をしたわけだが、同じ話をダラダラと話し、話が終わってドアを 閉めて中に入ろうとしても、ジッと黙ってこっちを見ているので、なかなか入れない。
昼飯を食べてから、大きなビニール袋を持って、発泡スチロールを彼の部屋に取りに行った。すると彼は、「ちょっと待ってください。持ってきます」と言って、奥に入っていった。そして、持って来た。
右手の親指と人差し指で、発泡スチロール2枚を挟んで。2枚重ねてティッシュ箱くらいの幅で、厚さはその半分だった。自分は「こ、これ!」と言って呆然としたが、「いいですよ」と言って、ビニール袋に入れて持って来た。
そのときの自分の様子を見て、彼は少し察したようだ。それから、管理人室に寄りつかなくなった。なんたって自分が後ろを向いて帰ってくるとき、内心は「何考えてんだ、バカヤロー!」と怒りに震えていたからだ。
自分の後姿は、炎がメラメラと燃え上がって見えたかもしれない。当分、怒りは収まらなかったが、しばらくすると「しかし、参ったなあ」と可笑しくなった。発泡スチロールを、指でつまんで持って来た姿を思い出して、吹き出した。でも、頼むから、もうやめて欲しいな、あんなことは。