この本の副題に「60歳から人生のサイズを大きくする」と、自分のような年齢の者にとって、役に立つことがたくさん書いてある。今までの記事でも、たくさん引用させてもらったが、他にも面白い記事がまだまだある。
「西洋には、”牛乳を毎日飲む人よりも、毎日配達する人の方が健康”ということわざがある」というのも、成程なあと笑ってしまった。ちょっと、ブラックジョーク的なところがある。著者が近年、最も感動したという言葉に、63歳で芥川賞を受賞した若竹千佐子さんという女流作家の受賞時の「受賞の言葉」があるという。
この若竹千佐子さんは、54歳まで専業主婦で、その後、御主人が脳梗塞で急逝した後、ずっと呆然としていたのを、息子さんが小説のカルチャーセンターに行くことを薦めてくれて、8年間通った後、芥川賞受賞となる作品を書いたそうだ。受賞の言葉を一部抜粋すると、
「人にはそれを抜きにして自分を語れないような決定的な『時』があるのだと思う。私の場合、夫の死だった。絶望しかなかった。それでも、私は喜んでいる私の心も見つけてしまった。悲しみは悲しみだけじゃない、そこに豊穣がある、と気づいた。子供の頃から、どうしても捨て切れなかった小説家の夢、機は熟したのだ。あとはただ書くだけだった」と。
すごい言葉だなと思う。どんな絶望の暗闇の中にいても、「でも、今だからこそ」という、一筋の希望の光もあるのだろう。自分が絶望の中にいたときも、パート仲間との多くの出会いがあり、また働いている介護の人達もそうだが、老人ホームの入居者やマンションの入居者を見て、色々と感じることがあった。そうして自分も少しずつ変わり、光も少しずつ見えてきたような気がした。
絶望という闇がなければ、こうした出会いもなかったし、出会ったとしても何も感じなかったのかもしれない。闇がなければ、かすかな光にも気づかなかったのだろう。今は、「こうなるべくして、なった」という気がして仕方がない。自分は失ったものが色々とあったが、大切なものも少しずつ、見つけてきたように思う。
この本は、トイレに行くときは必ず持って行き、パラパラと適当なページを開いて、読んでいる。歳を取ると、肉もたくさん食べなければダメだと書いてある。その理由を読むと、成程なあと思う。色々な知恵が詰まっている、いい本だ。