村上春樹は、自分より6歳年上だ。作家になる以前、東京・国分寺でジャズ喫茶を経営していたことがあるという。それもあって、ジャズにもめっぽう詳しいようだ。この本にはジャズは基より、ポップスやロックなどの曲もある。
ブルース・スプリングスティーンやREM、ジョニ・ミッチェル、そして自分が大好きなビーチ・ボーイズの曲「ディズニー・ガール」が入っていた。この「ディズニー・ガール」は大好きな曲で、他のミュージシャンもかなり取り上げて歌っている。キャス・エリオット、キャプテン&テニール、アート・ガーファンクルなどだ。
本家本元の、ビーチ・ボーイズのが一番好きだった。しかし、この本の中でこの曲の作者のブルース・ジョンストンのソロアルバムで、彼がピアノの弾き語りで歌っているバージョンがあることを初めて知った。早速、Amazon musicで探して聴いてみたが、これぞ弾き語りという演奏ですごくいい。
そういえば、この本に「ガルヴェストン」という曲のことが書かれていて、この曲が流行ったのはヴェトナム戦争のピークのときだ。この歌詞の主人公は、徴兵されてヴェトナムの戦地に送られていて、生まれ故郷のガルヴェストンと、そこで彼の帰りを待つ恋人のことを思っている、という悲しい歌だ。
村上氏は、「彼はどうして何のために遠いところに送られて、人を殺し、あるいは殺されなくてはならないのか、おそらく理解できなかったはずだ。今でも同じことが繰り返されていると思うと胸が痛む。死んで行くのはいつも若い人々なのだ。そして、彼らを送り出すのは、いつも年老いた人々なのだ」と書いている。
今回のロシアのウクライナ侵略を見ていて、今でも同じようなことが繰り返されていると思うと、人間の愚かさに愕然とする。犠牲になるのは、いつも若い人や子供や女性なのだ。悲惨なニュースを聞く度に、やり切れない気持ちになる。
瀬戸内寂聴さんが言っていた。「いい戦争など絶対ない」と。今回、「侵略された方にも責任がある」と言っていた元政治家がいたが、そんなことがあるのだろうか?どんな理由があるにせよ、一方的に侵略して相手を殺戮し、強引にねじ伏せようとすることのどこに、正当性があるのだろうか。