オジサン NOW

還暦過ぎたオジサンのつぶやき

「水太りのカニ」

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自分が、水産加工場で働いていたときに住んでいた町は、毛ガニの漁獲量が日本一だった。自分が働いていた工場も、生きている毛ガニを地元の市場から買って、茹でて冷凍し、旭川の市場に送ったこともあった。その毛ガニの加工をしていたときに、食品添加物業者の人がどこからともなくやって来て、毛ガニの重さを増やす添加物があるので使わないかと言ってきた。しかも、化学添加物ではなく、原料がデンプンなので安全だという。

歩留まりが良くなって利益も大きくなるので、ほとんどの水産加工場が使っているとも言った。要はドリップと言って、水を多く毛ガニ本体に含ませるため、その冷凍毛ガニは持ってみるとズシリと重くなる。お客さんは身がびっしり入っていると思い、買って家で解凍すると水が驚くほどたくさん出て、身は少ししかなかったということになる。

当時は、そんな笑い話のような話をよく聞いた。今は、品質重視になってきているので、そういうことはあまりないとは思う。ウチの加工場でも、実際にその添加物を使って実験してみたが、その添加物は完全に水に溶けずに白っぽくなったり、固まったりして、これはダメだということで使うのを止めた。確かに、水をたっぷり吸って、重量はかなり増えた。

当時、そんなことをやっていた水産加工場はたくさんあったし、道内の有名な店にも数多く出回っていたのを見たこともある。帆立の玉冷凍にも、この添加物を使っているという噂もあった。同じように、水をたっぷりと吸わせて冷凍する。

中には、ホタテの玉冷凍や冷凍の毛ガニの表面に、氷の皮膜を異常に厚くかけて、目方を重くしているのも結構有った。氷の被膜をかけるのはグレーズといって、本来は冷凍庫や冷蔵庫内で乾燥を防ぐために普通はやるけれど、ただ歩留まりを良くするために意図的に厚くかけていた水産加工業者も多くいた。今は、どうなのかな。

よく、冷凍毛ガニを慣れたように手のひらに乗せ、上下に動かして「ウン、重い!こういうのがいいんだ、こういうのが!」と、得意げに言って買っていくオジサン達をカニの専門店でよく見かけたが、「本当に大丈夫なのかい?」と思ったりする。スイカとは違うんだよと。