オジサン NOW

還暦過ぎたオジサンのつぶやき

「内田裕也氏が消えた!」

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去年の3月に亡くなった内田裕也氏のことで、未だに思い出すことがある。自分が学生のとき、たまたま昼の奥さん向けTV番組を観ていたら、当時ロックバンドのボーカルで歌っていた内田裕也氏が、ゲスト出演して、他のメンバーとさっそうとスタジオに現れて、演奏を始めた。

彼らの下の方から、大量のドライアイスの煙がモクモクと湧き上がり、ボーカルだった彼はマイクスタンドのマイクを握り締め、イントロのリズムに合わせてノリノリで体を左右に動かし、歌い始めるようとした次の瞬間、彼の姿が消えた。          

どこだと探したら、床から50センチくらいはあるドライアイスの煙の中から、マイクスタンドのマイクを持った手が、いきなりニョキっとあらわれた。なんと彼は、ドライアイスの煙の下に倒れていたのだ。ドライアイスで床が濡れていたので、滑って転んだのだろう。カカトの高い靴も履いていたと思う。

そして、そのマイクスタンドを杖代わりに起き上がろうとした次の瞬間、また滑って転んだ。そして、姿がまた消えた。その後も、何度も何度もマイクスタンドを杖代わりに立ち上がろうとするが、滑って立ち上がれない。演奏はずっと続いている。

とうとう、彼は頭に来たのか「チクショー!」と大声で叫んだ。彼の横で歌っていたコーラスの女性は、そんな彼の姿を見て、横を向いて必死に笑いをこらえていたが、とうとう吹き出していた。そうして、演奏は終わった。結局、内田裕也氏は「チクショー!」しか言わなかった。                           

そういえば、自分が師と仰ぐ泉谷しげる氏がフォーク歌手の頃、やはり昼の奥さん向けの生放送番組にゲスト出演した。番組の合間に、スタジオで食品の宣伝をしていたら、泉谷氏が「こんなもん、食えんのかよー!」と言った途端、TVがピーっと鳴って画面が真っ白になり、「只今、不適切な表現がありましたことをお詫びします」というテロップが流れたそうだ。当時のロックやフォークの連中には、テレビの生番組は向いていなかったようだ。