オジサン NOW

還暦過ぎたオジサンのつぶやき

「退廃の街 ソドム」

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NHKテレビの「あしたも晴れ!人生レシピ」クラブという番組で、福島の原発事故で移住した家族のことをやっていた。その家族は、かつて福島で10年間で作り上げた自然農場もやっと軌道に乗り、奥様の自然食レストランも軌道に乗っていた時に、原発事故で全てを失うという絶望的な悲劇にあった。それで、三重に移住した。

そんな時に、この御主人は旧約聖書に書いてある「退廃の街ソドム」の話を読んで、「自分はこれから過去を一切振り返らず、前だけを見てやっていこう」と決心する。そして、それから一度も過去を振り返ったことはないと言い、今も新たな土地を黙々と切り開いている。すごい人だと思い、感動した。

この「退廃の街ソドム」の話しは、以前から本やテレビなどで知っていた。ソドムという街では人々が悪事を行ってひどいので、神の怒りに触れてこの街を滅ぼすという内容だが、その時に善良な1家族だけに、神様がその街を滅ぼす前に脱出するように告げる。

ただし、「逃げる時に、決して後ろを振り返ってはいけない」と神様に言われていたのだが、奥さんが逃げる途中で後ろを振り返り、塩の柱になってしまう。自分は今までは、ただ漠然とそれだけの話と思っていたが、聖書の逸話にはそれぞれ深い意味があるということが分かった。

その御主人の話を聴いて、退廃の街を振りかえると塩の柱になるというのは、過去を振り返って嘆き悲しんでいるばかりでは、「生ける屍になる」という意味があるのだと思った。過去を断ち切って、生きて行かなければ不幸なのだと。

自分も歳を重ねていくに従って、過去のことを色々と悔やんだり、恥じたりすることが多くなった。嫌だったことや、辱められたことや恥をかいたことなどは、今でもその場にいたかのように鮮明に思い出す。いつも、そんなことばかり頭に浮かぶのでウンザリしたこともあった。今も、少し前の過ぎ去ったことで悩むことも多い。

「道は開ける」という、デール・カーネギーの本に、ある有名な人の「過ぎ去った昨日という過去と、まだ生まれぬ明日を鉄のドアで遮断する。今日やるべきことに全ての知性と情熱を注ぐこと、それが明日に備える最高の方法だ」という言葉が書いてあったのを思い出した。過去のことは「もうどうにもならない」し、未来のことは「どうなるか分からない」から、今この時を精一杯生きるしかないんだ、と思うようにしている。なかなか難しいことだけど。