オジサン NOW

還暦過ぎたオジサンのつぶやき

「恐怖のホワイトアウト」

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数年前、冬の吹雪の日に、女房が自宅から20分ほど離れた郊外の職場に通っていたが、仕事が終わって帰宅するのに周りが畑だらけの農道を走っていたら、突然ホワイトアウトに襲われたという。あっという間に周りが真っ白になって、前後左右まったく見えなくなったそうだ。そして、路肩に車が落ちて動かなくなってしまい、すぐJAFを電話で呼んだが「到着までに、時間がかなりかかる」と言われて、車内でどうしようかと恐怖におびえていたそうだ。

そうして数分間したら、突然さっと雪が止んで視界が開けたので辺りを見渡すと、一軒の農家みたいな家があったので、歩いて行って助けを求めに行った。家の人がすぐトラクターを出してくれ、車を路肩から車道に引き上げてくれたそうだ。後日、お礼にお菓子を買って持って行ったそうだが、とにかく、ホワイトアウトとは想像を絶する恐ろしいものだと、今でも言っている。

自分の職場の同僚も昔、仕事先から会社に戻る途中、吹雪で国道が混みあっていたので空いている農道を走ったら、ホワイトアウトに襲われたそうだ。しかも、少し周りが見えるようになって来ても、辺り一面が吹雪いた雪で平らになっていて、道路がどこなのかまったく分からず勘を頼りに走って帰ってきたが、よく道を外れて路肩に落ちず、無事に帰って来れたものだと言っていた。

その途中で路肩に落ちた車を1台見たが、自分のことで精一杯で助ける余裕などなかったそうだ。あれから比べたら、多少の吹雪など苦ではないと言っている。自分も昔、冬の吹雪の日に、家族で田舎の実家に行くのに国道を走っていたが、あまりにも渋滞しているので裏道の農道に抜けたが、これがさらにひどい吹雪と積雪でホワイトアウト寸前だった。これはまずいと思ってまた国道に戻ろうと思ったら、ずっと先を走っていた乗用車が路肩にストンと落ちたのが見えた。

少し躊躇したがこちらの方も危うい状況だったので、とにかくここを早く立ち去らなければ大変なことになると思い、なんとか引き返して国道に戻ることができた。翌日のニュースで、「乗用車が路肩に落ちて、乗っていた人はそのまま雪に埋もれて凍死」という記事が出たらどうしようかと思ったが、下手をするとこちらの方がそうなっていたので、人のことなどかまっていられなかった。

在職中は、仕事で江別から道北まで片道5時間かけて何度も走っていた。その時は、大きな町がほとんどなく、交通量も少なく、信号もあまりない275号線を主に走っていたが、冬になると大変だった。何度もホワイトアウトにあい、かすかに両脇の道路端の上に見える道路幅を示す矢印の標識を頼りに、少しずつノロノロと走っていたことがよくあった。

しかし、何度もホワイトアウトを経験していると、このホワイトアウトは長時間続くことはなく、数分間待っていると突然サッと視界が開けてくるのが分かった。そして、その時に急いで、その場所から離れることを覚えた。それが分かってからは、それほど恐れることもなくなった。

一番怖いのは、後続車に追突されることだ。ホワイトアウトの時は「その場に停まっていると危険」と聞いたことがあったが、ただ実際にノロノロ運転でも走り続けることはとても勇気がいる。とにかく前後左右まったく見えないのだから、ゆっくりでも走り続けることは、前に停まっている車に追突したり、対向車と正面衝突したり、道路から外れて路肩の外に落ちる可能性もある。それを考えると、なかなか前には進めず、その場に停まっている人が大半だろう。

吹雪の時には、周りに建物がほとんどない農道などの道を走らず、交通量が多くて周りに建物も建っている国道や道道などの大きな道路を走ると、まずホワイトアウトに会うことはない。ホワイトアウトは太陽の位置すらも分からなくなり、一切の方向が識別できなくなるので、恐怖心も半端なものではない。パニック状態になる。ちなみに、ホワイトアウトは雪山での発生が多いようだが、このように平地でもひんぱんに起きる。今まで、よく何ともなく無事だったなあと思う。

ホワイトアウトは雪だけだと思っていたら、霧のホワイトアウトもあるそうだ。それで、以前DVDビデオを借りて観た「ミスト」という洋画を思い出した。ミストとは、霧のことだ。原作が、あのスティーヴン・キングなので、怖いのは想像通りだったが、実に後味の悪い映画だった。エンディングがホワイトアウトのような霧で、その霧がサッと晴れた時に衝撃の結末が待っていて、「あーあ、もう少し待っていたらなあ」とため息をついた。ホワイトアウトは、なにもかも覆い隠してしまうのだ。